研究会 運用技術

情報処理学会第49回インターネットと運用技術研究会でECサイトにおける購買につながる行動の変化検出とハンドメイド作品を対象としたECサイトにおいての稀覯品の検出について発表をしました

研究会 運用技術

2020年5月14日から2日間に渡って開催された、第49回インターネットと運用技術研究会 (IOT49)で、ペパボ研究所から2件の発表を行いましたので論文(研究会予稿)とスライドと共に紹介します。

ECサイトにおける閲覧履歴を用いた購買に繋がる行動の変化検出

ペパボ研究所研究員 / ビジネスプロフェッショナル(データサイエンティスト)の財津( @zaimy )です。 今回の発表では、ECサイトの閲覧履歴を用いた購買に繋がる行動の変化検出について、次元数の少ない特徴量と学習不要なアプローチによる手法を提案しました。

ECサイトを訪れるユーザーが「ウィンドウショッピング」「商品の探索」などの複数の目的を持ち、「商品の検索」「商品の閲覧」「商品の購買」などのユーザーの行動が目的によって変化することを仮定すると、ユーザーの目的に応じてECサイトのシステムを適応的に変化させる(推薦手法の切り替えや決済導線の提示など)ことで購買率の向上が期待されます。

ユーザーの行動にはECサイトごとに様々な種類があるので、ここではECサイト一般に共通の行動である購買に繋がる行動の変化検出を考えると、

  1. ECサイトごとに利用可能な特徴量のうち,どれを購買に繋がる行動の変化検出に用いるべきかが未知
  2. ECサイトやユーザーごとに特徴量の値が取る範囲に差異がある

という2つの課題があります。

そこで、本発表では次元数の少ない単純な特徴量(=商品の閲覧回数に対する商品の属性の種類の比)を用いて、学習不要なアプローチ(=統計的仮説検定による平均値の差の検定)で購買に繋がる行動の変化検出を行いました。

実験と考察では、実際の購買ユーザーに対して変化検出が可能であり、ECサイトのユーザー行動の分析によく用いられる隠れマルコフモデルとの比較で真の非購買ユーザーに対する精度が上回ることも確認することができました。また、提案手法の利用目的を踏まえると、ユーザーが行動を行った直後に変化を検出することが重要ですが、ユーザーのごとの計算時間に関しても1.7ミリ秒程度と十分に小さいことを確認しています。

今後の展望としては、提案手法の精度の改善や計算時間の更なる短縮に加えて、提案手法で検出される変化点を、ペパボ研究所の @miyakey から既に発表されている Synapse (利用者の文脈に応じて継続的に推薦手法の選択を最適化する推薦システム)における文脈として組み込むことで発展させていくことを考えています。

研究会予稿

スライド

ハンドメイド作品を対象としたECサイトにおける単語の出現頻度を用いた稀覯品の検出

ペパボ研究所の研究員の野村(@komei)です。 今回の発表では、ハンドメイド作品を対象としたECサイトから稀覯品を検出するために、作品タイトルに含まれる単語の出現頻度に着目した手法を提案しました。

ハンドメイド作品を扱うECサイトにおいては、作品の希少性や独創性が価値の一端を担っています。 本研究では、希少性や独創性がある珍しい作品のことを稀覯品と定義しています。 ハンドメイド作品を扱うECサイトの利用者の一定数は、作品に希少性や独創性を求めている場合があるため、稀覯品をこのような利用者に紹介することで購入率の向上が期待できます。 また、稀覯品の中には、希少性や独創性の度合いが高すぎるものが存在しており、このような作品はカテゴリ間違いの作品である可能性が高くなります。 カテゴリ間違いの作品のカテゴリ設定を修正することによって、作品の検索性の向上が見込めます。 そこで、本研究の目的は、稀覯品を効率よく発見し、稀覯品を販売促進の効果が高い作品とカテゴリ間違いの作品に分類することに設定しました。

提案手法では、作品集合における作品タイトルに含まれる単語の出現頻度を尺度として、この尺度が相対的に低いものを稀覯品として検出を行います。 また、作品タイトルに含まれる単語の出現頻度の標準偏差を用いて検出した稀覯品を分類します。

実験から、①提案手法によって求めた評価値の上位に稀覯品が多く含まれること、②単語の出現頻度の標準偏差を用いることで販売促進の効果が高い作品とカテゴリ間違いの作品が分布する領域が分離する傾向があることを確認しました。

今後は、評価値の計算に標準偏差を含めることで、販売促進の効果が高い作品の検出精度を向上させたいと考えています。 また、提案手法によって検出した販売促進効果が高い作品を推薦に利用した場合の効果を評していきたいと考えています。

研究会予稿

スライド

まとめ

第49回インターネットと運用技術研究会 (IOT49)では、ペパボ研究所から2件の発表を行いました。 今回の研究会は、電子情報通信学会情報通信マネジメント研究会(ICM)と情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会(CSEC)との連催であり、運用技術だけではない幅広い観点での発表と議論が行われました。今後も継続的に研究会が開催されますので、エンジニアの皆様もぜひご参加ください。


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