Visual Analytics 機械学習

情報処理学会第84回全国大会でECサイト運営におけるデータ駆動型意思決定の支援システムについて発表しました

Visual Analytics 機械学習

ペパボ研究所 研究員の渡辺(@ae14watanabe)です。去る2022年3月3日〜5日に開催された情報処理学会第84回全国大会にて、「ECサイトにおけるデータ駆動型意思決定のための非線形テンソル因子分解を用いたVisual Analyticsシステムの検討」というタイトルで研究発表を行いました。今回は発表の概要および論文や発表資料についてご紹介したいと思います。

発表概要

本研究は、電子商取引(E-Commerce: EC)サイト運営におけるデータ駆動型意思決定を、Visual Analytics (VA)1という枠組みによって支援することを目指して、データ分析システムの開発を行うものです。 ECサイトの運営者は、ユーザの満足度向上を目的として、どのような施策を実施するかといった意思決定を日々行なっています。 近年はそのような意思決定にデータを活用していく、いわゆるデータ駆動型意思決定が盛んになってきています2。 一方で、EC領域に限らない一般的なデータ駆動型意思決定の支援のアプローチとしてVAがあります。 VAとは人間とデータ分析システムとの間での視覚的な相互作用を通して、人間主導なデータ探索・仮説検証・知識発見の実現を目指すデータ分析の枠組みです。

本発表では、データ分析システムがどのように人間の「仮説立案」を支援するかという論点にフォーカスし、ECサイトのデータに顕著な問題を踏まえた上で、その解決策について検討しました。VAでは、データ分析システムとの相互作用を通して人間が良い「仮説」を立案できるかどうかが重要です。しかしながら、ECサイトで収集されるユーザの商品に対する行動ログには、スパースさやユーザ・商品の数の膨大さといった性質があり、仮説立案は決して容易ではありません。本発表ではこの困難を解決するために、既知のデータから未観測なユーザの嗜好性を予測し、かつその結果を運営者が対話的に抽出できるデータ分析システムを構築しました。その結果、仮説を着想するキッカケを提供しうるモデルを獲得し、その分析結果に運営者がアクセスできる環境を構築することができました。一方で、システムが提示する結果の解釈性の向上や意思決定支援の観点からのシステムの評価方法が今後の課題として明らかになりました。

仮説立案の問題点や実装したシステムの詳細について知りたい方は、ぜひ以下の論文や発表資料をご覧いただけますと幸いです。

論文

発表資料

発表を終えて

ペパボ研究所での研究についての初めての発表ということで、発表前は相当緊張していてうまくいくか不安だったのですが、聴講してくださった皆さんが活発に質問してくださったおかげで非常に有意義な発表となりました。いただいた質問が今後の検討すべき点に気付かされるものばかりで、聴講してくださった方々には感謝の気持ちでいっぱいです。また今回の発表の原稿執筆や資料作成を通して、本研究のビジョンを明確にすることができ、今後の課題を抽出できたのは大きな収穫でした。一緒に検討してくださった共著者の酒井さんや三宅さんに心より感謝いたします。今後はECサイト運営者へのヒアリングなども行いつつ、より実用的なシステムの実現に向けて開発を進めていきたいと思います。


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