ペパ研

研究員・渡辺の研究所にジョインした経緯とこれからの抱負

ペパ研

はじめまして!研究員の渡辺と申します。今年の4月に新卒としてペパボに入社しまして、約5ヶ月の研修を経てこの度ペパボ研究所にジョインしました。このエントリではこれからどうぞよろしくおねがいしますという気持ちを込めて、自己紹介がてらペパボ研究所でお世話になることになった経緯やこれから頑張っていきたいことについて書きたいと思います。

研究所にジョインした経緯

ペパボ研究所に入りたいと思ったのは、2019年の夏のインターンに参加させていただいた時です。5日間という短期間ではありましたが、サービスのアクセスログの分析をテーマに研究所の皆さんと和気あいあいとディスカッションしながら実データに触れる面白さを体感させていただきました。その際に三宅研究員からペパボ研究所の研究に対するスタンスを聞くことが出来ました。それは「アカデミックの世界の最先端の技術を社会の実問題に適用するときに生じるIssueを研究のテーマにしていく」という姿勢であったり、「アカデミックで認められる水準のトライアルこそが他のサービスとの差を生じさせる技術を生み出す」という信念です。私はこの話を聞いて、企業の研究所として理想的な形なのではないかと非常に感銘を受け、ぜひここで研究をしたいと思いました。

少し余談ですが、当時私は大学院の博士後期課程の2年生で研究があまりうまく行っておらず、今後も研究を続けてもいいのか悩んでいたタイミングでした。ですがこのインターンをキッカケに、ペパボ研究所に正式な研究員として戻れたとしたら、その時に手土産となるような研究を今の環境でしなければならないと思いました。その意識の変化と良い研究テーマとの出会いが重なって大学院での研究を軌道に乗せることができ、Decision Support Systemsというジャーナルへの論文掲載アクセプトまでたどり着くことができました。そのぐらい自分にとってペパボ研究所でのインターンは大きな経験でした。

ということで念願かなって無事ペパボに入社し、ペパボ研究所にジョインさせていただくことになったということです。

これからやっていきたいこと

ペパボ研究所では「なめらかなシステム」をビジョンとして研究活動を行っています。なめらかというのは、ざっくばらんに言えばシステムとユーザの間でコミュニケーションの障壁が排除されている状態のことです。「なめらかなシステム」の世界観ではユーザとシステムの関係を、ユーザが命令をしてシステムがその通りの反応を返すような主従関係だとは捉えていません。ユーザとシステムそれぞれが複雑な振る舞いをする自律的な存在であり、そのような対等な二者がコミュニケーションを取っている関係にあると捉えています。ユーザは一人一人がその時々によって異なる判断基準や選好といったコンテキストを持って行動していますし、システムはそのコンテキストに応じて適応的にレスポンスします。 このような世界観をベースとした上で、具体的なシチュエーションにおいて自律的と見なせる、つまりユーザのコンテキストを読み取って適応し、もっと言えばユーザのコンテキストを変化させてしまうぐらい「賢い」システムを考えていくのがペパボ研究所の1つの研究に対する観点だと私は捉えています。私はこの観点から、生成モデルによる意思決定支援システムをテーマに研究をしていこうと思っています。

生成モデルというのは、近年機械学習の世界で注目を集めている技術で、既存のデータセットからそのデータを作り出したであろう生成過程をモデル化するものです。このモデル化がうまくいけば、既存のデータセットに実際はないけれどもいかにもありそうな新規のデータを生成することができます。生成モデルの1つである敵対的生成ネットワーク(GAN)が実在しない人物のリアルな顔画像を生成するといったアプリケーションが有名です。生成モデルのもう1つ大きなポイントは、データのエッセンスを抽出するということです。生成モデルにおいては潜在変数と呼ばれるデータの性質を左右する本質的で比較的シンプルなパラメータのようなものが実は存在していて、これが複雑な変換を経てデータとして生成されたという仮定を置きます。実際に分かっているのはデータの方なので、この生成過程をさかのぼるように各データの潜在変数と変換を推定するのが生成モデルの学習となっています。この得られた潜在変数からデータセットについての知見を得る、また人間がこの潜在変数を操作することで対応する新規データを生成するといったことを生成モデルは実現します。

この「潜在変数を抽出し提示できる」「潜在変数を操作することで未知のデータの生成を操作できる」という生成モデルの機能によって、ユーザがシステムとの対話を通して思ってもみなかった有意義な知見を発見し、ひいては自身のコンテキストを変化させ得るような「賢い」システムを実現できるのではないかと考えています。というのも、既存の研究としてフォントをデザインするという意思決定を支援する試みが行われているからです。この研究では生成モデルと視覚的なインターフェースを組み合わせ、既存のフォントの集合の全体像をマップとして可視化し、その上で操作を行うことで新しいフォントを生成しています。このような創作活動と生成モデルの相性が良いのは間違いありませんが、これに限らず様々な場面での意思決定を支援できる可能性があると私は思っています。手前味噌で恐縮ですが、前述した私の論文ではチームのマネージャがメンバーを選択するという場面においての有用性を検討をしています。ペパボは自社でE-commerceをはじめとするWebサービスを展開していますので、Webサービスにおけるユーザの意思決定を支援するにはどのような生成モデルとインターフェースを持つシステムを構築すれば良いかこれから研究していきたいと考えています。

最後に

ペパボ研究所は研究員それぞれが自分の得意なもの・好きなものを追求しながら、共通した「なめらかなシステム」というビジョンのもとで研究を精力的に行っています。自分は研究者としては本当に未熟ですが、この勢いに乗っかって自分の好奇心に従いこれからどんどんアウトプットしていきたいという所存です。また実は大学院の方はまだ博士号を取れておらず、博士後期課程に在籍したままの状態となっているので、今年度中には博士号を取ろうと現在博士論文を執筆している最中です。こちらの方も並行して頑張っていきます。これからどうぞよろしくお願いいたします!


【PR】パートナー積極採用中!

ペパボ研究所では、新しいパートナーを求めています。詳細については、当研究所のトップページをご覧ください。