ペパ研

ペパボ研究所の新しい習慣

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ペパボ研究所 研究員/プリンシパルエンジニアの三宅(@monochromegane)です。 ペパボ研究所では今年から論文読み会、勉強会、雑談会の3つの会をはじめました。 本記事では、これらの会の活動を紹介し、継続の工夫と、半年経過して習慣化したことで得られた利点についてお話しします。

会の経緯

ペパボ研究所は2016年7月に開設された、事業を差別化できる技術を作り出すために「なめらかなシステム」というコンセプトの下で研究開発に取り組む組織です。 現在、研究員5名(所長含む)、客員研究員2名で研究開発を進めています。

ペパボ研究所では、研究員の個々人がその専門知識に基づき、なめらかなシステムを実現するための様々な研究開発に携わっています1。 研究を形にするというのは強い信念を持って未開の分野を切り開き成し遂げる力が求められますので、研究員は、その研究に対し自らが起点となって調べ、考え、技量を磨いていきます。 一方で、これは、楽しくも孤独な時間であり、迷走することもあるでしょう(僕はしました)。 また、時間は有限でもあるので、より効率的にサーベイや相談、突っ込んだ議論ができれば望ましいです。

研究所では、これまでも週一回の研究会と普段の会話を通した議論や情報共有によってこれをサポートしてきました。 これらのサポートも十分機能してきましたが、週一ではやや間隔が開くこと、普段の会話では議題が発散したり不定期であることから忙しい時(相談が必要な場合かもしれない時)に参加できないなどの課題があったように思えます。 そのような折、IOTS2019の帰りにさくらインターネット研究所での毎日の雑談会の取り組みの話を聞き、定期的で気軽なコミュニケーションの機会の有効性を改めて認識しました。

そこで、研究所の持つ、チームとして相互の存在がそれぞれの研究に良い影響を与え合う機能をより明示的かつ積極的に働かせるべく、これまでの研究会に加え、今年より以下の3つの会を開催してみることにしました。

  • 論文読み会(通称、あすなろ会)
  • 勉強会(通称、開墾会)
  • 雑談会(通称、スタ場(ば))

これらの会を通し、研究員が一層、取り組む研究分野に精通し、活発な議論が行えるようになればという目論見です。 なお、全ての会はリモートで行われています。

それぞれの会の活動については後述しますが、全てに共通している方針は、場を継続すること、です。 僕自身は、地域言語コミュニティを共同で主催していることもあり、こういった複数人が集まることで個人の活動の入出力の範囲や練度を高める「場」としての機構は、実体がないため、継続的な活動を通してのみ維持されると考えています2。 そして、継続のためには本人たちが無理なく続けられるようにしなければなりません。 ですので、これらの会は、参加は自由ですし、事前の準備なども基本的には不要としました。

以下、それぞれの会の活動内容を紹介します。

論文読み会

通称「あすなろ会」です。 毎朝10時から30分、参加者全員で同じ論文の同じ箇所を読んで、まとめたり議論したりします。 事前準備が不要という方針ですので、事前に読んでくるのではなく、初見で一緒に読み進める形式をとっています。 ある範囲を読んだ後、誰かがまとめてみて、自由に補足や質問をしつつ、全員で理解を深めていきます。 また、落合フォーマットなどを利用して要旨を端的に素早くまとめる練習も並行しています。

分野は自由ですが、なめらかなシステムのコンセプトに関わりそうな適応的な仕組みに関するものや、最近はKDDRecSysなどから推薦系の論文を読むことが多くなりました。 数えてみると6/19時点で21本を読んだようです(1本あたり1-2週間程度ですね)。

この会では、参加者の解釈が統合されるので、個人で読む時に比べて内容の理解が深まるだけでなく、論文の読み方や構成、着目すべき点、大きな国際会議であれば外せない点などをみんながどう読んでいるのか内容以外にも多く学ぶことがあります。 上記を意識することで自身の研究のサーベイについても幾分か効率的になったと感じており引き続き参加していきたい会です。 何より毎朝、知的好奇心を満たすイベントから始まるのは楽しいですよね。

また、副次的な効果ですが、毎朝、同じ時間に開催されることで仕事や生活のメリハリがついています。 リモートワーク下においてもリズムを乱さず淡々と研究を進めるのに役立っていると思います。

勉強会

通称「開墾会」です。 二週間に一度、あすなろ会に続けて30分から60分程度で開催されます。 論文を読む中で、分野によっては基礎知識がそもそも足りないと感じる人もあり、あすなろ会の中で説明するよりは、理解を深める時間を別途設けてみようと派生した会です。 題材について担当がついて発表する形式を取りました。 説明できる程度には理解が必要ですので、事前準備が全く不要というわけにはいかないのですが、すでにある解説ページや論文などを使いながらでOKとしています(もちろん資料作成も歓迎)。 6/19時点では以下の内容と担当で9回開催されています。

アウトプットを契機に周りの理解を助けるだけでなく、自身の理解も深まり、相乗効果が出ていると思います。 また、わからないので逆に担当しますという場合や、わからない人に対して自分も興味ある分野かも知れないので担当するという場合もあり、相互に興味関心を開拓する機会にもなっていて良いなあと感じています。 工夫というわけではないですが、担当がいないことが続くと場が自然消滅してしまうので、空いている時は何か話せるように普段のサーベイでネタをストックしています。

雑談会

通称「スタ場(ば)」です。 毎日、昼休み30分前から30分ほどやっています。 特に議題は設けず、カフェで話すように気軽に現在の困りごとや面白い論文ネタ、たまには具体的な仕事の調整からリモートワークの便利グッズの話までなんでも話しています。 もちろん事前準備はありません。 みんなが来やすい時間になるよう何度か開催時間の調整がありました(最初は夕方でした)

他愛無い時間ではありますが、前日からの差分が小さいうちにお互いの状況を把握することができ、週次の研究会までお互いの状況が把握できず迷走していた状態になることは確実に減ったんじゃないかと思います。

おわりに

本記事では、ペパボ研究所の新しい習慣となった3つの会を紹介しました。 これらの会の活動の効果は即時出るものではありませんが、半年間の継続によって、自身やチームが取り組む研究分野に対する知識を増やし、議論や研究の段階を押し上げていると思います。 また、昨今のリモートワークが推進される状況においても、このような継続的で活発なコミュニケーションを習慣化していたことで研究開発の体制や効率を維持することができました。 ペパボ研究所ではこの他にも、週報によってアイディアや論文を非同期に共有する取り組みも始まっています。 引き続き、個々人で研究を練り上げていくのはもちろんのこと、研究チームとしての側面からも研究を高め事業を差別化する技術を研究開発していきます。


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