ペパ研 研究会 運用技術

九州大学との共同研究報告とクックパッド吉川さんの招待講演について

ペパ研 研究会 運用技術

ペパボ研究所主席研究員兼チーフエンジニアの松本です。Twitter上ではまつもとりー(@matsumotory)と呼ばれています。

2018年の3月5日から2日間に渡って開催された、第40回インターネットと運用技術研究会(IOT40)で、九州大学との共同研究の進捗について研究報告してきました。また、その研究会の中で、クックパッドの吉川さん(@rrreeeyyy)に「Web サービスの信頼性と運用の自動化について」というタイトルで招待講演をして頂きましたので、それらについて紹介します。

論文(研究会予稿)とスライドを以下に公開します。

九州大学の笠原先生の研究報告

研究会予稿

スライド

軽量コンテナに基づく柔軟なホスティング・クラウド基盤の研究開発と大規模・高負荷テスト環境の構築

発表後の感想

本発表では、九州大学とペパボ研究所が共同研究の中で議論を行い、FastContainerとしての研究の立ち位置や課題を整理しました。本来は、NIIとのクラウド実証実験の中で、定量的に負荷検証やスケーラビリティについても明らかにしたかったのですが、そこまでいくことはできませんでした。一方で、FastContainerやマネージドクラウドのコア技術の課題とその解決の方針が明らかになったこと、また、FastContainerで実現したいサービスや世界がどういう立ち位置であるかを明確にできたのは良かったと思っております。

質疑応答では、HTTP以外にももう少し汎用性を持たせて議論した上で、FastContainerの本質的な良さやその言語化をさらに詰めると良いのでは、といったようなコメントを頂きました。我々としてもまさにFastContainerの良さについてうまく説明できていないところがあるため、引き続きそのあたりの言語化を行っていきたいです。

ちなみに、人員の関係からこのセッションの座長をわたし自身が行ったのですが、中立な立ち位置で質疑応答をコントロールするというのはとても勉強になりました。

ペパボ研究所の松本の研究報告

研究会予稿

スライド

発表後の感想

本発表では、FastContainerを更に応用可能な領域があるのではないかというところを詰めるべく、また、弊社のホスティングサービスとしてはWebと同様にメールは2大サービスのうちの一つであることも考慮し、メール基盤としてのFastContainerを利用した設計について報告しました。

本発表よりも前に、上述した笠原先生の発表もあったことから、FastContainerがWebだけでなくもう少し汎用的な立ち位置で基盤を構成できるのではないかということに対する一つの答えとしてお話できたこともあり、質疑応答ではポジティブなコメントを沢山いただけました。一方で、メール技術については商用ソフトウェアやエンタープライズ向けで多くの研究開発がされているため、そういった方向への調査も必要ではないかという意見を頂き、引き続きMail on FastContaierの新規性と有効性を明確にするために、エンタープライズ方面のメール技術についても調査していきたいと思います。

FastContainerアーキテクチャはメールにも強く活かせそうだということを研究会の中で強く実感しましたので、引き続きメール基盤の実装と構築を行いながら、大規模環境での実験を行っていく予定です。

クックパッドの吉川さんの招待講演

研究会予稿

スライド

本研究会では、自分が運営委員であることもあり、この研究会の後に開催されるIPSJ-ONEでIOT研究会推薦で登壇されるクックパッドの吉川さんに招待講演をしていただきました。

クックパッドにおける、監視技術のリファクタリングの話や、Googleが提唱しているSREの考え方に基づきつつも、クックパッドさん自身でその考え方を咀嚼した上で活用している話は大変興味深い話ばかりでした。

特に、吉川さんが何度もおっしゃっていた「ちゃんとやる、ということが大事になってくる」という言葉は、シンプルなようで我々エンジニアにとってコンセプトになりうる言葉だと感じました。何か課題に直面したり、なんとなくうまくいったときに、それがどういうことなのか、世界ではそれをどのように解決しているのか、その上でもっとよくするにはどうしたら良いのか、ということを「ちゃんとやる」ためには、手段として論文を読んだり、自分たちも論文を書いて、「ちゃんとやる」サイクルを社会で回していくことも必要になってくるはずだ、という話だと理解し、とても共感できるものでした。

まとめ

第40回インターネットと運用技術研究会(IOT40)では、複数の研究会と連載で行いましたので、日頃あまり聞くことのない研究発表を聞くことができて、とてもおもしろかったです。例えば、PFNの土井さんの「ソフトウェアとしての人工知能に関する論点整理」や未来大の松原研の「学内向けオープンクラウドにおける計算資源の動的な増減への対応手法に関する検討」「ネットワークブートに特化したSDN/NFVキャッシング機構の実現に関する検討」は大変興味深かったです。

研究会の中で未来大の松原先生と議論が盛り上がり、その縁あって、4/19(4/20からリスケ)には未来大の松原研究室と合同で研究発表会を行うことになるなど、研究会を通じて研究開発の広がりと、その自由な雰囲気を感じることができ、今回の研究会参加も大変ペパボ研究所にとって有益な研究会になりました。

ということで、今後もIOT41は富山、IOT42は鹿児島で開催されますので、ぜひ、エンジニアの皆様も気軽に参加いただけると幸いです。


【PR】パートナー積極採用中!

ペパボ研究所では、新しいパートナーを求めています。詳細については、当研究所のトップページをご覧ください。