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「mrubyを利用した軽量コンテナクラウド基盤の研究開発を介したmrubyの大規模・高負荷テスト」が2017年度Ruby Association開発助成に採択されました

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GMOペパボ株式会社 技術部 データアナリストの財津 (@zaimy) です。ハンドメイドマーケット「minne」のデータ分析基盤の構築やデータ分析、機械学習モデルの開発、ペパボ研究所の研究事務・研究広報を担当しています。

この度、ペパボ研究所と、九州大学 情報基盤研究開発センターの共同研究開発チームによる、「mrubyを利用した軽量コンテナクラウド基盤の研究開発を介したmrubyの大規模・高負荷テスト」プロジェクトが、2017年度Ruby Association開発助成の対象として採択されたので、その内容をお伝えします。

ウェブホスティングの課題とペパボ研究所の取り組み

現在では、法人・個人を問わず、Webサイトやアプリケーションを制作・公開することができますが、ウェブホスティングにおける突発的なアクセス集中などの高負荷への対応について、容易に利用できるレンタルサーバ(共用サーバ)では利用者側がリソースの制御を行うことが難しい一方、柔軟性の高い専用サーバーやVPSはサーバーの拡張作業や監視といった運用管理が継続的に発生するという課題があります。

ペパボ研究所ではこうした課題を解決するべく、生物の細胞が持つ生命維持機能をヒントに、システムが自律的にリソースの制御を行う仕組みの研究に取り組んでいます。また、本研究のもと開発したコンテナ型仮想化技術は、レンタルサーバーの手軽さと、柔軟にリソースの増減ができるクラウドのような拡張性・自由度を兼ね備えたクラウドホスティングとして、レンタルサーバー「ロリポップ!」において試験提供中の「マネージドクラウド」プランの基盤技術に用いられています。

共同研究開発の概要

ペパボ研究所と九州大学の共同研究開発チームでは、このコンテナ型仮想化技術を基盤に用いたクラウドホスティングを大規模インフラ上に実運用に近い環境で構築し、擬似的に作り出した高負荷下で実証実験を行っています。この実験を通して、どのような負荷状況でもコンテナの起動や終了を高速に行うことができる環境を構築することで、ホスティングサービスにおける高負荷時のスケーリングやコンピューティングインフラの増強・移行、システムの再起動が必要なために滞りがちなセキュリティ更新や基盤ソフトウェアの入れ替え等を柔軟かつ自動的に行えるようになります。

より詳細な内容は先日発表したプレスリリース「ペパボ研究所 × 九州大学 情報基盤研究開発センター コンテナ型仮想化技術によるクラウドホスティングの共同研究開発を開始 ~より頑健で柔軟なホスティングサービスの実現を目指す~」をご覧ください。

プロジェクトについて

今回採択されたプロジェクトではRubyアソシエーションの指定により、Rubyの開発者である、まつもとゆきひろ氏にメンターを務めていただくこととなりました。

極端な高負荷状態となりうるクラウド基盤においてもmrubyが問題なく動作することの証明や、改善点があればそれらをフィードバックすることで、mrubyやRubyの信頼性向上に繋げるとともに、上述の研究開発開発に伴い生まれるソフトウェア群を学術分野や弊社内での利用にとどまらないオープンソースのクラウド基盤関連ソフトウェアとして公開することで、Rubyの発展に貢献することを目指しています。

具体的には、以下のようなソフトウェアを公開する予定です。

  • ホスティングの基盤であるコンテナライブラリとその周辺ツール
  • 突発的アクセス時に対応できる動的なプロクシ制御ライブラリ

これらのソフトウェアを含む、プロジェクトの今後の進捗状況については、このブログでも随時お伝えして参ります。

さいごに

このようなオープンソースソフトウェア(以下、OSS)としての公開について、ペパボでは、OSSとして公開されている技術を取り入れると同時に、自社で培ってきた技術や知見を幅広く公開し、社内だけでなく社会全体に貢献する姿勢を大切にしています。 実際に、ペパボ研究所の主席研究員である松本 (@matsumotory) による mod_mruby / ngx_mruby 、研究員の三宅(@monochromegane) による The Platinum Searcher をはじめとして、会社としても、所属するエンジニア個々人としても、いくつものOSSを世の中に送り出しています。

ペパボでは、このようなOSS貢献を含む ペパボのエンジニアの働き方 に賛同いただける技術者・研究者の方を求めています。ランチトーク制度(ペパランチョン) などもありますので、ご興味があればぜひお申し込みください。

末筆ではありますが、本プロジェクト以外にも、2017年度Ruby Association開発助成には、Rubyの普及と発展のための素晴らしいプロジェクトが採択されています。ぜひ 2017年度Ruby Association開発助成 公募結果 をご覧ください。


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