研究会 運用技術

マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2025)シンポジウムの招待講演として、なめらかなシステムについて発表しました

研究会 運用技術

ペパボ研究所 研究員/プリンシパルエンジニアの三宅(@monochromegane)です。 2025年6月25日から3日間に渡って開催された、マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2025)シンポジウムで、ペパボ研究所から招待講演を行いましたので発表資料と共に紹介します。

なめらかなシステムと運用維持の終わらぬ未来

ペパボ研究所では、情報システムに関わる利用者(ユーザー、開発運用者)が、その関わりにおいて不便さや面倒さを感じない未来のシステムを「なめらかなシステム」と名付け、その実現を研究コンセプトとしています。 今回の招待講演では、以前から研究所内で活発に議論されてきたこのコンセプトについて、これまでの議論に加えて、「目的生成」という観点を取り入れた最新の検討内容を紹介させていただきました。

従来のなめらかなシステムでは、情報システムとその利用者、さらには背後にあるコンテキストまでを含んだ総体をシステムとして捉え、それらの継続的な関係性の中から発見・創出されたコンテキストを用いて、状況に応じた適切なサービス提供を目指してきました。 しかし今回の講演では、こうした枠組みを一歩進め、システムが単に目的を与えられる存在ではなく、利用者や環境との相互作用を通じて、目的そのものを動的に構成していく可能性に着目しました。目的が変化しうる現実の課題において、関係の中から意味や意図を生成し、応答していく構造こそが、現代の情報システムに求められる「より高次のなめらかさ」であると再定義しています。

講演では、サイバネティックス、基礎情報学、エフェクチュエーションなどの既存理論を手がかりにしながら、この新たな視座に立ったシステム設計の可能性を探りました。また、個別の研究成果をこの枠組みに位置付けることで、今後の発展に向けた展望を提示しました。 講演後には、参加者との間で多様な視点から活発な議論が交わされ、ローティの偶然性に基づく哲学的立場、レヴィ=ストロースの構造人類学、さらにはウィトゲンシュタインの言語ゲーム論にまで話題が広がり、「目的」や「意味」の生成をめぐる学際的関心の高さが浮き彫りとなる場となりました。

ペパボ研究所では、今後も「なめらかなシステム」の進化に向け、目的生成的な情報システムの構想とその実現に向けた研究開発を進めてまいります。

発表を終えて

今回は現地開催ということもあり、普段はなかなか接点のない分野の方々とも直接対話を交わせる貴重な機会となりました。多様な分野からの報告に触れ、視野が広がると同時に、自身の研究にとっての新たなヒントも得ることができました。 合宿形式ならではの親密な交流もあり、初めての方とも多く知り合うことができ、非常に楽しい時間でした。

最後になりましたが、招待講演に向けた議論と準備をともに進めてくださった共著者である研究所の所長(@kentaro)、ならびに研究所の皆さんに心より感謝申し上げます。


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