研究会 運用技術

マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2021)シンポジウムの招待講演として、なめらかなシステムについて発表しました。また、メール送信集約に関する九州大学との研究成果を発表しました

研究会 運用技術

ペパボ研究所 研究員/プリンシパルエンジニアの三宅(@monochromegane)です。 2021年6月30日から3日間に渡って開催された、マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2021)シンポジウムで、ペパボ研究所から招待講演と発表を行いましたので論文と発表資料と共に紹介します。

なめらかなシステムと運用維持の未来

ペパボ研究所では、情報システムに関わる利用者(ユーザー、開発運用者)が、その関わりにおいて不便さや面倒さを感じない未来のシステムを「なめらかなシステム」と名付け、その実現を研究コンセプトとしています。 今回の招待講演にあたり、研究所内で活発に議論されているものの、大きなテーマであるがゆえにあまり外部でじっくりとお話しする機会のなかった、このコンセプトについて紹介させていただきました。 なめらかなシステムでは、情報システムとその利用者と背後にあるコンテキストまで含んだ総体をシステムとして捉え、それらの継続的な関係性から発見・創出したコンテキストを持って適切にサービスを提供します。 運用技術の側面においても、継続的に変化する複雑な情報システムに対して、コミュニケーションを通した、互いの意図を汲んでの振る舞いの自動かつ継続的な変更は、情報システムの理想状態の維持や、そのための運用業務の負担軽減として有用だと考えます。 講演では、サイバネティックス、コンテキストアウェアネス、基礎情報学等の従来のシステム構想から、なめらかなシステムに至る過程や、なめらかなシステムを実現するための部分研究とその位置付けを紹介しました。 ペパボ研究所では、今後も、なめらかなシステムの実現に向けて、研究開発を進めてまいります。

論文

発表資料

透過型SMTPプロキシによるメール送信集約とキュー輻輳回避の検討

GMOペパボや九州大学では、高集積マルチテナント型のメールホスティングを運用しています。メール送信における従来のシステムは、利用するグローバルIPv4アドレスを減らすためにメール送信サーバの集約をする構成です。この構成は、メール送信キューの輻輳やキューの中に含まれる問題のあるメール送信によるキュー詰まりが課題でした。

私たちは先行研究であるメール送信サーバのコンテナ化を発展させ、透過型SMTPプロキシの導入によりこの課題解決を試みています。発表では、予備実験やプロトタイプ実装についても言及し、提案する手法が有用であることを解説いたしました。また、この透過型SMTPプロキシを利用することで対向MTAの振る舞いが変わったことを検知するための情報収集が可能となることを紹介しました。今後は、これらの手法をプロダクション導入に向けて機能開発や研究を重ねていく予定です。

論文

発表資料

発表を終えて

オンラインで開催されたシンポジウムでしたが、発表後の質疑応答も活発に行われ、発表に関する有意義なフィードバックもたくさんいただける、非常に充実した時間となりました。 今後も研究を前進させ、またDICOMOで発表できればと思います。 最後になりましたが、招待講演に向けての準備を支えてくれた、共著者である研究所の所長(@kentaro)、ならびに研究所の皆さんに心より感謝します。


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