ペパ研 研究会

ペパボ研究所として第9回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2016)で発表しました

ペパ研 研究会

ペパボ研究所の主席研究員の松本(@matsumotory)です。先日行われた、第9回インターネットと運用技術シンポジウム(IOTS2016)に登壇、座長、及び、運営委員として参加してきました。

IOTS2016とは、インターネットと運用技術について研究するIOT研究会が年に一度開催している査読付きのシンポジウムです。また、IOT研究会自体は、企業の現場のエンジニアから見ても、運用技術そのものの研究を非常に重要視している稀有な研究会だと思っています。IOTS2016の開催の趣旨に目を通して頂ければ、その雰囲気が伝わるだろうと思いますので以下に簡単に紹介します。

インターネット上では多種多様なサービスが提供されている。このサービスを提供し続け、ユーザに届けることを運用と呼ぶ。サービスが複雑・多様化すれば運用コストは肥大する。このコストを運用担当者の人的犠牲により「なんとか」してしまうことが「運用でカバーする」と揶揄される。日本では大規模構造物を建造する際に、破壊されないことを祈願して人身御供 (人柱) を捧げる伝統があるが、現在のインターネットの一部はこのような運用担当者の人柱の上に成立する前時代的で野蛮な構造物と言うことができる。

運用担当者を人柱となることから救う方法の一つが運用自動化である。運用の制御構造における閾値を明らかにすることにより、人は機械にその仕事を委託することができる。機械学習や深層学習により、この閾値を明らかにすることをも機械に委託することが可能となることも期待される。不快な卑しい仕事をやる必要がなくなるのは、人間にとってひじょうな福祉かもしれないが、あるいはそうでないかもしれない。しかし機械に仕事を委託することにより空いた時間を人間が他のことに使うことができるのは事実である。

本シンポジウムは、インターネットやネットワークのサービスの運用の定量的な評価を通じて、積極的に制御構造を計算機に委託することで人間の生産性を向上させ社会全体の収穫加速に結びつけることを目的とする。

特に今回は、招待講演としてはてなの坪内さん(@y_uuk1)にお願いをしまして、Webオペレーションにおける運用技術や専門的な時系列データベースの探求、さらに、IOTS2016の開催概要を踏まえて、そういった高度な話題をちゃんと運用技術に帰着するようなストーリーを持ってお話しいただけて、大変素晴らしい講演になりました。詳しくは、坪内さんのブログエントリにも紹介されておりますので、そちらを御覧ください。

ペパボ研究所として登壇

今回は、招待講演の調整や座長、運営委員に加えて、ペパボ研究所の取り組みについても発表してきました。といっても、まだ評価や実績が終わっていない段階の内容ですので、Work in Progressセッションという内容で登壇しました。タイトルは「特徴量抽出と変化点検出に基づくWebサーバリソースの自律制御アーキテクチャ」ということで、Webサーバの高集積マルチテナン方式におけるリソース管理の課題についてまとめた上で、課題を解決するためのアーキテクチャについて発表しました。予稿は以下から誰でも閲覧可能にしています。スライドも公開しております。

概要

概要は以下の通りです。

Webサーバの高集積マルチテナント方式は,単一のWebサーバに複数の利用者環境であるテナントを高集積に収容することで,ハードウェアや運用のコストを低減するために利用される.しかし,Webホスティングサービスは,テナントに配置されるWebコンテンツの動作を管理者が詳細に把握できないため,テナント間でのリソース競合をあらかじめ予測することは困難である.また,原因となるテナントの調査についても,高集積の場合,複数のテナントが原因対象となる事が多く,かつ,その対象が時間の経過と共に変化していくため,適切な調査と対策に要するコストが非常に高くなる.そこで,本研究ではWebサーバのリソース特徴量を時系列データとして抽出した上で変化点検出を行い,原因となるテナントと変化らしさの重み付けを都度解析した上で,サーバ全体のリソース逼迫時には,Webサーバが解析結果を元に自律的に原因となるリクエストのリソース分離を行うアーキテクチャを提案する.

予稿

発表スライド

まとめ

ペパボ研究所では、上記のようにアカデミックな研究会にも運営委員として参加しながらも、会社での取り組みを学術研究として発表しています。また、アカデミックな研究会と関わる中で、少しでも企業側のより現場に近い運用やエンジニアリングの状況についても、今回のような招待講演を通じて研究会としても両方向の視点から議論できるようなコミュニティにしていきたいと思っております。また、僕自身も来年は研究会のPC(Program Committee)を任されましたので、そういう方向でもきっちりと研究活動を行っていきたいと思っております。

是非そのような、インターネットの運用技術に関する企業とアカデミアが自由に議論できる場について興味のある方は、僕やペパボ研究所、IOT研究会までご連絡下さい。


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